運動会で地下足袋って履くの?

運動会は応援していても楽しいですが、自分も実際に参加してみたくなるものです。
子どもの運動会にお弁当を作って応援に行きますが、どの子も一生懸命に走ったり飛んだりしている姿を見ていると、ついつい昔を思い出してしまいます。
特にクラス対抗リレーの徒競走は、自分の子どもが出ていなくても応援に熱が入ってしまいます。

ところで、最近徒競走に出ている子たちの足元が違うことに気づきました。
徒競走の子ら全員が運動靴ではなく、地下足袋を履いているのです。
足袋と言えば結婚式のとき和服を着たときに履いた「たび」です。
確認してみると、昭和の徒競走の時に裸足で走る子が何人かいたそうです。
しかし、運悪く小石かガラスの破片がトラック上に落ちていて、それを踏みつけたため、大けがをしたことがあったそうです。

以来学校の運動会では、裸足で走ることを禁止することになりました。
また裸足で走る子のときと同時に、昭和の時代には運動靴の高額化が問題となっていました。
徒競走に出場する子は有名陸上選手が履いている靴を履いてくるようになり、次第に過熱化することに発展してしまいました。

そこで学校は教育委員会と相談して、徒競走に出場する子には足袋を履かせることになりました。
地下足袋を履かせることになった経緯は、江戸時代の飛脚が「たび」を履いているのをヒントになったそうです。
地下足袋は地面の起伏を足の神経に伝え、自動車のサスペンションのように、しなやかな動きをすることができます。
また小石など地面に落ちている障害物から足を守ることができるのです。
最新科学で分析された運動靴に匹敵するほど、「地下足袋」は安くて万能なのです。

最近、小中学校の運動会で昔あった競技が復活してきています。
組み立て体操も復活し始めた競技の一つとなっています。
組み立て体操は子どもらが縦横に繋がり重なり合って、一つの形を作り上げていく競技です。
過去に高く積み上げる形のとき、足を滑らせて転落する事故が相次いだことから、組み立て体操は何時の間にか小中学校の運動会から消えてしまいました。

組み立て体操は確かに危険な競技です。
しかし組み立て体操だけが危険な競技ではありません。
全力でぶつかる競技である以上、どの競技も危険を伴います。
ただ、事故が発生したから競技を取りやめにするのは、責任回避ではないでしょうか。

昔、組み立て体操は、裸足で行われていました。
裸足の場合、足に砂などが付いていると滑りやすくなってしまいます。
そこで、家を作る主に高所で働く大工さんが履いている「地下足袋」を採用する学校も増えてきたのです。
家を作る工事現場は木や砂など色々な材料が置かれており、大変危険な状態です。
このような場所でも、大工さんは家の上に登らなければなりません。
大工さんが履く足袋は足にしっかりと密着するようになっており、しかも足袋の底は滑らないようにタコの吸盤のように滑り止めが施されています。

組み立て体操の競技においても「じかたび」を導入して、再度、競技として復活するケースが多くなっています。
組み立て体操で使用する足袋も、大工さんの「じかたび」と同様に滑り止めの加工が施されています。

最近、小学校の運動会で色々と異変が起きています。
現代の社会情勢をいかにも映し出しているような感じでもありますが、昔なら家族で手作りのお弁当を楽しんだ記憶があるのではないでしょうか。
しかし現在の小学校運動会の多くは、弁当ではなく給食を出しているのです。
応援に来た親は一端家に戻って昼食を済ませて、再び運動会の応援に戻るのです。
このことは共稼ぎ家庭が多くなったことで、やむを得ない事情があることなのでしょう。

もう一つ、運動会で全員が地下足袋を履いているという光景も目にするようになりました。
昭和30年代の人であれば、記憶がある人もあるかと思いますが、当時、運動靴が買えない家庭が多くあり、運動会で足袋を履いていたことがあります。
それが今の時代に全員が地下足袋を履いているのです。
確かに一部の親が高額な運動靴を履かせたりすることはありますが、それでも全員が運動靴で通学している今の世の中です。

足袋の持つ機能性などが再び見直され、運動会で地下足袋を履く学校が増えているのです。
地下足袋は工事現場など足場が悪く、しかも高所作業が必要な職業で使われています。
そもそも「たび」は古く平安時代の貴族が履く履物として使われていました。
これが、江戸時代になると建設ラッシュとなり大工がお忙しとなりました。
そこで高所でも安定して効率よく作業できるものはと、「たび」を履いたのが最初とされています。

地下足袋はその構造上、足にしっかりとフイットするため、安定した姿勢をとることができます。
とかく、扁平足が多いと言われる現代子には、「たび」は最適だったことになります。